「そっかあ……自分で言ったのになあ、忘れてた。ありがとう、翔瑚」


アクアの声で名前を呼ばれると、胸がどきっと、うずく。高鳴る。

それは純粋な美しい気持ちからばかりではなかった。
帰郷して、離れてみて、じっくり考えてみた時に、見えなかった先のこと。

一緒に生きていけるはずがない。

不安が、常に、胸の中にはあったのだ。


だけどそれは、俺1人で完結させていていいものじゃない。それは、避けられるなら避けていたい話題であることは確かだった。
だけど、そうやって避け続けて逃げ続けて生きていっても、きっと後悔するだけだ。


かえる場所は同じだと思っている。

何の根拠もない、そんな優しい想像の世界を、守りながら口を開く。


「真珠を探すよ」

「え?」


唐突すぎる言葉に、アクアは亜麻色の髪を揺らして反応する。


「正直、言うまでもないかもしれないけど、今までは真珠を探すことに、熱心にはなれなかった。初めこそ信じ難い気持ちもあったけど、そいういうことじゃなくて……結局、真珠が見つかった時っていうのは、アクアと別れる時なんだろうなあっていう、確信めいた予感があったから」


アクアは瞬間息を止めて、目をそらそうとした。けれど視線は留まった。


「今、は?」

「今は……、見つかった時が、別れる時、では、ないんじゃないかなあと」


これは勝手な言い分だった。今だって状況は何も変わっちゃいない。

変わったところがあるとすれば、きもちの部分、だけが。