次第に足音も消え失せて、もうその人は帰ったのかな?


な~んて染々考えながらも私は、静かにベンチを立った。


涙も冷めたことだし、今日はもう本当に帰ろう。


来た道を一歩、また一歩と歩いていると…
いきなり誰かに腕を掴まれた。


"キャー"と叫ぼうとしても、声が一向に出ない。

どうしよう、誰か助けて。



「おい
お前叫ぶなよ!!」


この優しいトーンの声はさっきの人?
今度は良く、顔の輪郭から全てが見える。


短髪のブラウンに、ちゃんと整えられた眉毛。

鼻は、外国人並みにスラッとしていて高い。

身長も、平均男子並み以上はあると思う。


くっきり二重に、優しそうな瞳。



もしこの瞳が嘘の偽りの目だとしたら、一体この人は、何を見てきたのだろうか…?



一言で言い表せば…
やっぱりかっこいい!!
モデルを通り越した、最強美男子とも言っておこう。

そう、案外私は誉め上手なのである。


そんなことより、こんなにかっこいいイケメン君が私を待ち伏せ?



「次は何ですか?
変態の次は、私を拉致するつもり?」


「ちげぇーよ、バカかお前」


バカって何よ。
バカって…
イケメンを武器に、私に対抗するつもり!?


「バカ?はぁ!?
親にも言われたことないのに、何であんたにバカって言われなきゃいけないのよ!!」


「親にも打たれたことないのに…
の 二の次なる立派な名台詞だな」



「うるさいよ、もう
それより腕痛い」


「あ、ごめん」


そっとその人は、私を掴んでいた腕を離した。

掴まれた部分がちょっと赤くなってるし、ヒリヒリする。



「あの~
もう帰っていいですか?」


帰りたい。帰りたい。


「ダメだ!
この俺の気が触らねぇんだよ」


帰らせてよ、くそ~


「私、あなたに何もしてませんよね?」


「今から俺ん家に来い
愚痴ぐらい何でも聞いてやる」


は、はぁい!?
イケメン君の家に行けちゃうの…?
私は少しビクッと体を震わせ、驚きながらも我に返る。


もしやこれは、イケメンの罠かもしれない。


「いえ、結構です」


「いや、ダメだ
ダメだっていってんだろ?
何回言わせんだよ」


何か怒ってるみたいだし…
もし断ったら、逆に何かされそう。
本当にどうしよう。
私は意を決して、涙ぐみながらも物事を決めた。


「もう分かりました
家に行ったら、私に今後一切関わらないと約束してくれますか?」


「さぁー、それはどうかな
取り合えず行くぞ!!
俺にちゃんとついてこい」


う、嘘でしょ?
私はあなたの奴隷ですか?


何なのよ、この人。



でもちょっぴり、可笑しな人。



私は次第に笑みが溢れてきた。