すると…
私の両手をいきなり掴んで、血相を変えて怖い表情をしている晃。

まるで赤鬼。
頭に角二本生やして、さっきよりは違う晃がどことなくいた。


「鈴、お前本当のこと言え
俺にドキドキするか?」


一体何?
どうしちゃったの…?


「うん、するよ
だって緊張してるから」


「そうであって欲しいと思ってた」


突然緩やかな顔に戻った、優しい表情の晃だ。

私の両手を離してはほっとし、心を撫で下ろしている。


えっと、どういうこと!?


「何で?」


「もし、鈴が俺のことを好きだって言ってたら…
俺はお前の前からいなくなってたかもしれない」


「晃、それはどういう意味?」


話が食い違い、ますます意味が分からなくなってくる。



「俺と一緒にいたいんだったら、俺を好きになるな
分かったか?」


「うん、分かった
晃を好きにならないから」


被害妄想でもしてるのだろうか。

取り合えず話だけでも、合わせておこう。



「鈴にはもっと素敵な男性が現れるよ
俺がその証人だ
だから鈴、お前は幸せになれ
俺と違ってな」


「それはな」


"それはない"と言おうとしたのに、晃に口を塞がられた。


晃は、中指を一本だけ添えて…
しーのポーズをしている。


もうこれ以上は、俺に問いただすなと 言ってるかのようにも見えた。