そして病室に戻ると、晃は窓際を見てたそがれていた。

久々の外を眺めて、心地がいいんだろう。


私はあえて晃とは呼ばず、風間くんと名前を呼ぶ。


「風間くん、外出ると気持ちいいよねー」


「えっと」


「鈴だよ!気軽に鈴って呼んでね」


「じゃあ、鈴さん…」


「うん、宜しくね!!!」


「よろしく」


それからしばらくしてから、彩那が晃の見舞いにやって来た。


「鈴、来たよー」


「あ、彩那」


晃が彩那の顔を見るなり、ぽっと頬を赤らめた。


「風間くん、目覚めてよかったね!!
さっき、看護師さんに聞いてもうテンション高いよ!
はい、これ果物」


彩那が晃に果物を差し出すと、更に頬を赤らめる晃。


「あれ、二人ともなにかあった?」


「ううん、なんもないよ」


「そっかぁ、ならよかった」


「彩那…」


「え、何?風間くん」


「俺の彼女の彩那」


「違う違う
風間くんの彼女は、この水川鈴だよ!!」



はははっと、笑って誤魔化す彩那だが
私には誤魔化しがきかない。




晃の記憶が複雑になっている。