「では風間さん、少し休んでてください

水川さん、ちょっといいですか?」


「はい」


私は先生に病室の外に呼ばれた。


「やはり、記憶障害ですね
今は無理して記憶を思い出さない方がいい」


「じゃあ、私のことは分からないままなんですか?」


「記憶を失っているのは、一時的かもしれないし、もしくはそれ以前の問題かもしれない
一応、脳のMRIを撮ったがどこにも異常はなかった
一時的と言っても過言ではない」


「いつ記憶を思い出しますか?」


「何か、刺激を与えるか
もしくは思い出の地に行くと思い出すかもしれないが…
今はまだだめだ!!」


「分かりました」


「体の傷が治せても、心の傷は中々治らないものなんだよ
水川さん、宜しく頼む」



真剣な眼差しで言った先生に、二度肩をぽんぽん叩かれた。


先生、私を後押ししてくれてありがとうございます。