「なにそれ…古くさい
晃はいつの時代に産まれたの?
それよりご飯まだ?」


「古くさいとかご飯まだとか何だよ…
人がせっかくラップやってんのに
ましてや、エプロンさえもらってねぇーけど?」


ラップに関して、これ以上触れるのは止めておこう。
それにしても古くさかった。


「あ、あれラップだったんだ…
へぇー
後エプロンはキッチンにあるから、それ着けて料理して」


「おふ男はラップが上手いってオチにした

キッチンな
了ー解」


「私は、ソファーに座ってくつろいでるね!!」


ふふふ。
そろそろだね。

楽しみだよ、晃くん。


「今度さ、鈴が飯作って?」


え?



呆然と晃に言われた言葉に脳が刺激して、体が一部反応した。

何だかじわじわと熱を感じ、体が次第に熱くなってくる。
確かに、女性は料理で男性の胃袋を掴むって言うけど…


勘違いされたら困るなぁ。
なに考えてるんだろ、私。
そんなこと一ミリも思ってないのに…


思いがけないことを言う、晃が悪い。


「そうだね、私の気が向いたらね」


「さんきゅ」


それから晃は、そそくさとキッチンに行き、冷蔵庫を開けては、"う~ん"と眉間にシワを寄せ悩んでいるようにも見えた。


私ってそんなに冷蔵庫の中、空っぽだっけ?
さっき冷蔵庫を見た限り、ナポリタンを作る材料くらいは有ると思うけど…


そう思いながらも祈るように私は、晃が台所に立っている姿をしきりに眺める。


何かを思い出したかのように、晃が急にそわそわし始め、頭の上に小さなミニ電球がキラキラと一瞬私の中で光った気がした。


「晃どうしたの?」


私は、リビングから声をかける。


「うん?
大丈夫だから気にすんな」


「気になる~」


そろそろかな。



「ならエプロンさ、本当にこれで良いのか?」


そう言って、私の前に歩いて現れた晃を見て絶句した。



きたーーー!!!



「晃…」


少し以上照れくさそうに、思い詰めた表情を浮かべている晃。


「あれ、鈴のお父さんのエプロンは?」


「ごめん…
あれクリーニングに出してる
忘れてただけだから

ぷっ」


やっぱり面白い。
案外似合ってるじゃん。

私の口角が上がり、次第に笑みが溢れ
笑いが止まらない。




「おい、今おならしただろ?
それとも何だよ、笑ったのかよ…」


「だって、晃ったら私の代理用エプロン着てるんだもん
しかもそれ女の子用だし、ね」


そう、晃が着ていたのは…

ピンク色と紫色が交わった、蝶々の絵柄がプリントされている可愛らしいエプロンだった。


それも私が仕掛けた仕業。

だって、晃への仕返しだからね。



「うるせーよ、バカ
飯いらないのか?」


「いるいる
この事は、後日ちゃんとお詫びするから、ごめんね」


「今お詫びするって言ったよな?
約束だかんな」


「分かった」


それからと言うものの、何事もなかったように…
さっぱりした表情で、キッチンへとそそくさと戻っていった晃。



何だか地味に嬉しそう。
それとも、初めての体験にわくわくしてるのかなぁ~





それにしても、笑ったなぁ~


あぁ、お腹痛い。

笑いすぎて脇腹も痛い。