「鈴どうした?」


「ううん、何でもないよ」


心配そうに私を見つめる晃。

気が付けばふいに晃の袖を、ぎっしりと握っていた。


「やっぱり何かあったんだな…
もしかして記憶を思い出したのか?」



「違うよ!ただ…」


「ただ何?」


「誰かが私のことを呼んでいたの
鈴、鈴ー待ってよー って…」


「そうか
それは少しずつ記憶が甦った証だな」


「記憶が甦る…」



私は自分の記憶が甦るなんて、一ミリも思っても見なかった。


きっとこの屋上と縁があったのか。
それともはたまた、私達二人をこの屋上に運命の糸で引き付けて、手繰り寄せてくれたのかも。