「……奈々、開けて?」
「待ってて」
足音が止んで扉を開く音が聞こえるとまた足音が響く。バイクのエンジンを吹かす音の中。
扉の閉まる音がすると同時に音が一切聞こえなくなった。聞こえるのはわたし達三人の呼吸の音と足音だけだ。
「……瑚琴、悪かったな。あいつらに俺は瑚琴を見せたくないからさ」
颯兄の匂いが離れると部屋の中が見えた。
それと、颯兄の申し訳なさそうな顔。
「颯ちゃんは、シスコンだしね?」
「違うから。ただ、瑚琴が心配なだけ」
奈々さんの言葉に颯兄が顔を少し赤くしながら顔を逸らしてそう言う。
「でも、颯ちゃんのその気持ちわかるよ。瑚琴ちゃんの本当のお姉ちゃんじゃないけど瑚琴ちゃん可愛いから私も心配……」
ソファーに座らせられてる私の前にしゃがみ込んで頭を撫でてくれる奈々さん。
颯兄は奈々さんを見て家族に見せた事ない程の優しい微笑みをしていた。
そして、私と奈々さんの頭を撫でてくれた。
「瑚琴も奈々も俺が守るから……」
力強い言葉で温かい笑みで言った颯兄の言葉は私と奈々さんに安心をくれた……そんな気がする。
奈々さんなんか、頬を赤く染めてるし。
この二人ほど……理想なカップルはいないな。
「……へぇー、颯汰堂々と二股?」