「大丈夫、今あいつらいないはずだし」



颯兄に手を引かれて顔を颯兄の服で隠したまま車の外へと出されて連れて行かれる。
なんか、容疑者になった気分……。




右手を颯兄が引いてくれて左肩には奈々さんの手があった。





「颯汰さん!奈々さん!…………」




颯兄と奈々さんの名前を男が叫んだ後沈黙が訪れる。
多分……私だよね?
顔を黒い服というか颯兄が着ていた特攻服という物を掛けられているから黒い物体が歩いてるって驚いてるのかな?





「……あの部屋に俺が許可を出すまで誰も近寄るな。幹部であってもな。これは、総長命令だ」





黒野諒と話していた時と同じくらい低いトーンで話す颯兄。
その声に体が震える……颯兄が颯兄じゃないようなそんな気がして。





強く手を握ると颯兄の手は変わらず私の手を優しく包み込んでくれた。





「ここからは、階段よ。気を付けてね」




「いい、俺が連れてく」




奈々さんの声が聞こえたと思ったら颯兄の意味のわからない単語が聞こえてきたと同時に私の体が宙を舞ったのがわかった。




「……っ、……!?」




「少し我慢して。すぐだから」




すごく近くで颯兄の声が聞こえてきた。
多分、というか絶対お姫様だっこされてるよね……。
背中と膝に感じる颯兄の手でそうだって思った。





ゆらゆらと揺れる私の体。
颯兄……すごい力持ち。
人を一人持ち上げて階段上れるなんて。