「……許さねぇ」
奈々さんのおかげで少し落ち着いてきた頃に車の中を響く颯兄の低い声……。
奈々さんの腕の中で颯兄に目を向けたら今まで見たことないような怖い顔をしてる颯兄がいた。
「……颯ちゃん、わかるけど今は抑えて。瑚琴ちゃんが怖がってる……」
「……っ、瑚琴、ごめん……」
奈々さんの言葉で私を見て眉を下げる颯兄。
私の体は無意識に震えていた。
なんで、震えてるのかなんて一つしかない。
あの時から大ッ嫌いな暴走族という存在に会ったから。
そして、大好きな義兄も暴走族だったから。
でも、あの事を忘れたんじゃなくて私の為だったから……。
暴走族は……私の大切な人を奪った。
遼平……。
あの日を思い出すだけで胸が締め付けられるように苦しくて視界から色が消えたかと思うと赤で染められる……。
「……こ、瑚琴ちゃん……?」
強く奈々さんの細い体にしがみつくように抱きつくと奈々さんは不安そうな声を出して私を呼ぶ。
「……瑚琴……少し我慢して」
助手席にいるはずの颯兄の声が私の真後ろから聞こえてきて体に颯兄の匂いがする大きな服を掛けられた。
あぁ、もうついたんだ……。
きっと、颯兄の言ってた場所に。
"鬼麟と言う名の暴走族の居場所に。"