「……子猫ちゃん、名前は?」



「…………」



漆黒の吸い込まれそうになる瞳が私を捉えて離さない……。
黒い豹に……捉えられてしまった気分だ。




でも、絶対……こんな人に教えたくない。
そう思い、口を固く閉ざす。




「……まぁ、いいか。俺は黒野 諒(クロノ リョウ)。諒でいいよ、子猫ちゃん」




黒野……諒……。
危険人物の名前として覚えておかなきゃ……。




暗い部屋の中で微かに黒野諒が微笑んだのがわかった。
私は、逆に黒野諒を睨んでいた……もちろん、憎しみを込めて。




「……で、子猫ちゃん?泊まっていく?」




泊まる!?
絶対に、無い!死んでもない!




「帰りますっ!」





こんな危険人物と一晩も一緒にいたら妊娠しちゃうよ!
一緒の空気すら吸いたくないくらい。





「こんなに、真っ暗だけど、一人で帰るの?」





「…………え」





私が、ここに来たのはお昼のちょうど日が真上に上がったくらいの時だったと思うんだけど……私、何時間寝てたんだろ……。





カーテンを引いて窓の外を指さされてそこに目を向けると外は驚くほど真っ暗だった。
此処がどこなのかもわからないのに、こんな真っ暗な中帰れるわけがないじゃん。





「……嘘だよ、送ってあげるから安心していいよ」