「子猫ちゃんは、初めてかな?大丈夫、俺うまいから」
「……い、やっ……」
黒野さんの顔が近づいてきて顔を逸らすと黒野さんの手に顎を掴まれて顔の位置を戻されてしまう。
「……ハハっ、泣き顔とかちょーそそられんだけど、俺」
「…………んっ!?んんっ!!」
涙で滲んだ視界の先で私の唇に自分の唇を押し付けてくる黒野さん。
嫌だ……。
初めてのキスなのに……こんな人に……。
固く閉ざしている唇を黒野さんの舌がこじ開けようとしてくる……。
嫌っ!!
――パーンッ!!
「……ってぇ……?」
「……っう……やめてくださいっ!!初めてのキスは……好きな人としたかったのに……こんなの酷……いっ……」
気付いたら私は黒野さんの頬に平手打ちをかましていて、黒野さんはすごく呆気を取られた顔をしていたけど私はそれどころじゃなかった。
「……てか、夢見すぎでしょ。キスなんかただの物理的接触に過ぎないし。それに、誰としようが変わらない」
「……うるさいっ!!あんたみたいな、人には私の感情なんか一生かかったってわかんない!!大っ嫌いっ!!」
そう言うと上に乗っていた黒野さんが私の上から退くのがわかって、私はその瞬間にすぐに起き上がってベッドの上から降りて黒野さんと距離を取る。
「……気の強い子猫ちゃんだな。気の強い子は嫌いじゃないね。それに、女に嫌いなんて言われたの子猫ちゃんで二人目だ」
嫌ってもらって構わないです!!
むしろ、嫌って欲しかった。
「気に入った」
「…………」
私を絶望させるのに十分な言葉だった。