ー放課後ー。

いつものように、わたしは美術室へ向かった。



『ガラガラッ』

「はぁーっ。考えすぎた!美玲ちゃんの言う通り、結局恋の色決まらずだし…。」


あのあと普通に授業を受けて、考えを巡らせようと思ったけど…よく分からなくなるからやめた。


「ううぅ…せめてなにかヒントでもないかなぁ…」

頭を抱えて悩ませていると。


『ガラガラッ』


「あれ?春?」


「へ?…あ!部長!」


そこにいたのは、美術部部長、川崎唯先輩だった。フレンドリーで、とても優しい人。


「すみません、部室借りてます」


「いーのいーの。で、なんで頭抱えてたわけ?春のことだから、どーせ課題がらみだと思うけど」

見透かすような目でこっちを見る部長。す、鋭すぎる…。

ごもっともとでも言いたげな顔してる、と指摘され、反射的に顔に手を添える。

「で、課題の何で悩んでるの?」

美術関係のものが入った本棚を漁りながら聞く部長。これは、部長にヒントをもらえるチャンスなんじゃないでしょうか!

「じ、実は…恋の色が決まらないんです。ありきたりな色だけじゃなくて、それにアクセントを加えたいっていうか…。」

部長は本を探す動きをとめ、私の方に向き直る。


「アクセント…ねぇ。春、恋したらさ、その好きな人ってどんな風に見える?」

どんな風に…。
ふと、窓際から高橋くんの姿を見る。

「キラキラ…輝いてみえます」


野球に打ち込む真剣な顔も、友達とはしゃぐ笑顔も、私には全部輝いてみえた。

「輝いて…ねぇ。じゃあさ、好きな人の姿がキラキラ輝いて見える色って………何色?」


高橋くんの姿が、輝いて見える色……私の、恋の色は…。


「金色…。」




そうだ。高橋くんのどんな姿も、私には金色に見えてたんだ!


「部長っ、ありがとうございました!おかげでベースの色が決まりました!!」



「いやいや、そんな大したことしたわけじゃないよ。色を決めたのは春だし。…っと、もう行かなきゃ。じゃあ春、課題頑張ってねっ」

そういって部室を出る部長。本当にすごい人だなぁ…部長のおかげで、なんとか課題完成に近づいた。

「ありがとうございましたっ」

答えを導き出してくれた部長に、1人大声で、お礼をして部室をでた。