ー昼休みー。

「うぅ…困った」

私と美玲ちゃんは今、屋上でお昼ごはん中。なのですが、1つ深刻な問題に直面していました。…私だけ。

「そー深く考えないでも、恋の色なんてありきたりでいいんじゃないかな?」

ありきたりで…ありきたり…ありきたりってなんだ。ありきたり…きたりあり…そもそも、ありきたりって…。

「きたりあり…。」

「わー!春ちゃんクラッシュ寸前だよ!きたりありじゃなくて、ありきたり!もう…春ちゃんは考えすぎなんだよ。そんなんじゃ知恵熱でるぞーっ」

「あたっ」

ぴんっと、おでこにデコピンされる。

「…じゃあ美玲ちゃん、ありきたりの色ってなに?」

「んー…恋は赤じゃない?初恋は赤に白で淡いピンクとか!」

初恋は淡いピンク…か。

「確かにありきたりだ!でも、それにアクセントを入れたいんだよなぁー。はぁ、そのありきたりの色で表現出来ちゃう美玲ちゃんがうらやましい…。」

そう。美玲ちゃんは直感でそれ!と決めたらそれと、それの同色系のいろしか使わない。普通の人なら全体的に平面だったり、世界を表現しきれなかったり色々あるんだけど…美玲ちゃんはそれをやってのける、天才なのだ。

つまり、美玲ちゃんは1度決めたらその色で、自分の世界を表現出来る。頭が空っぽの私とは違うなぁ…。


「私はパーっと書いちゃうけどさ、春ちゃんは考えて考えて、実感できたら描き始めるでしょ?完成した絵をみると、身近で、共感できて、それでも自分じゃ描けない独特なものがあるから、ちょっと悔しいんだよね。」

フフっとはにかむ美玲ちゃん。

独特…なんて。美玲ちゃんはそう言ってくれるけど、初恋ができてようやく課題のアイディアも浮かぶと思ったのに、肝心の色が想像できないんじゃ元も子もないよー!

「結局色、決まった?」

私の中の恋の色は、赤?白?ピンク?青?水色?

「…わかんない」

全部しっくりこなくて、私は首をふった。

そう言うと美玲ちゃんは微笑みながら、まぁ、実感できるまで頑張ればいいよ、と言いながら立ち上がった。

「よし、じゃあそろそろ教室戻ろっか?もうチャイムなっちゃうし」

「うんっ」

結局なんの案も浮かばないまま、私と美玲ちゃんは教室に戻った。

私、恋に恋してるだけなのかな…。