男子と接点がない私にとって、『恋』というものがよくわからない。絵で表すとしたらどんななのかな?
そう考え込む私、三浦春(みうらはる)は高校2年生の美術部。絵を描くのが大好きなのだけれど…困ったことになってしまった。

「あれれー?ため息なんかついちゃって、まさかの恋かな春ちゃーん?」

そう声をかけてきたのは同じクラスで同じ美術部、私の親友の空雲美玲(そらくもみれい)ちゃん。

「あ、美玲ちゃん!ふふ、恋なんかできたら美術の課題で悩むことなんかないよ…。」

「あー、あれか!がんばるねぇ春ちゃんも。そんなの実際にしてみればいいじゃん」

そんなことを軽く言えちゃう美玲ちゃんは凄いと思う。
私達の美術部はいつも何らかの課題を決めてから絵を描く。そして昨日出された課題が、『恋』だったのだ。

「うぅ…だからねっ!その肝心の『恋』が出来ないから言ってるの!」

涙ぐむ私をみて、美玲ちゃんは笑う。

「ごめんごめん!でもこんな可愛くてか弱い女の子なんて今時いないよ?部活熱心で…私だったら即恋に落ちちゃう!」

抱き締められる私。

「うぅ…私なんかダメだよ。美玲ちゃんはそりゃ可愛くてスタイル良くて性格もいいし、しかも彼氏いるし!!」

そう、美玲ちゃんには彼氏がいる。隣のクラスの西倉祐希(にしくらゆうき)くんっていって、スポーツ万能で頭もいい、当然女子にもモテる人。

「ふふふ、今日も帰り待っててくれるっていってたんだよー♪」

ニコニコ話をされると、余計実感させられる。
はぁ…『恋』なんて、難しすぎる課題出さないでよ…。

「あ、部活熱心で思い出した!うちのクラスの…お、噂をすれば」

『ガラガラッ』

「おーす」

「うちのクラスの高橋瞬(たかはししゅん)。野球バカなんだけど優しいし爽やかでそれでいてイケメンだから、超女子うけいいんだよねー」

それでいてクラスのムードメーカーなんてさ、と美玲ちゃんがつけたす。

「確かに…高橋くんが入ってきたとたんみんな高橋くんの所行っちゃった」

すごいな、人気者って…。

「でも人気者すぎて、近寄りがたい…かな」

「んー、まぁ確かにねぇー。春ちゃんにとっては難易度高すぎだよね」


はにかむ美玲ちゃん。

「あ、そういえば西倉くんも野球部じゃなかったっけ?」

確かそうだったはず。

「そうだよ。しかもなにげに高橋と仲良いの!こんな所に接点が!みたいな感じだね」

西倉くんの話題がでて嬉しそうにする美玲ちゃん。分かりやすいなぁ。私にも、その感情分けてほしいくらい。
恋をする。なんて、私にはありえない。もし恋したとしたらそれは奇跡といっていいほどだろう。
まだこのときの私には予想できなかった。その奇跡がおきようとしているのだから…。