『ねえねえーあんずちゃん、鳩さん出してよ!』
お友達の京子ちゃんがおねだりしてくる。
「良いよ!」
そう幼稚園の園庭の片隅で、2人向かい合って座り直す。
「行くよ?いい?よーく見ててね!」
手を少しこすってハンカチを掛ける。
「ここに、何のへんてつもないハンカチがあります!それを取ると…」
『白い鳩さんが出てくる!!』
「白い鳩さんが出てくる!!」
2人で同時に叫ぶと、
ハンカチがもぞもぞしてきた。
ハンカチを取ると、白い鳩が青空へ飛び立って行った。
『凄いなーあんずちゃん!私、あんなマジックできないよーっ!』
「京子ちゃんだって、練習すれば出来るよ!」
『本当?』
「本当!」
『じゃあ、頑張ってみようかな♪』
「頑張ってよ!」
『そう?なんかそう言われると勇気わく!ありがとね!』
「うん!じゃあ、また明日ね!」
『またね!』
ー京子ちゃんは、次の日からずっと、幼稚園にも、小学校にも、中学校にも、
…来なかった。