最後の日の夜、王女は悪魔と共に庭園で月を見上げていた。


「きれいな月ですね…。」

王女がそう言うとベルゼブブは「そうですか?」と、興味無さそうに返事をした。

「赤い月は人の魂を迎えに現れると言いますからね…、良いものでは無いと思いますよ?」

「そうですか?でも私は好きですよ。」


ベルゼブブはまたつまらなさそうに首をかしげた。


「ところで、何のご用ですか?」


王女がベルゼブブの目をまっすぐ見つめる。


「ベルゼブブ…、

もう魔界に戻ってください。」

「それはつまり契約を解消すると…?」

「はい。」


ベルゼブブの体から刺すような怒気が発せられるが王女は怯まずに続ける。


「私はもうあなたとは一緒に居られないのです。」

「それはどういう「トール…。」

王女がベルゼブブの言葉を遮る。


「あなたが私の命を蝕んでいたことは知っています、でも…、それでも私は。

ずっとあなたのことが好きでした。

さよならベルゼブブ・ドレス・トール。」


王女はキスをして立ち尽くしているベルゼブブを置いて部屋に戻り眠りについた。