ギィーと小気味悪い音と共に扉が開く。


「青原風架です。菊池先生いますかー?」


職員室に入ると、教室とは違う独特の匂いが鼻をかすめ、身を包む。


職員室に響き渡るくらいの声で呼び出す。


「おーう。どうしたよ、青原」

職員室の入り口付近が先生の机。

先生は椅子の背もたれに体を預け、グィーっと伸びをしながら
首を後ろの私に向けた。

間の抜けた声と共に。


先生はこの学校の先生の中でも一番に値するくらい、緩い人。

まぁ、親しみやすいから生徒の中では結構人気だったりもする。

そんな先生を実は私も気に入っている。


授業は、雑談の方が多いけど、
教えるのは結構上手。

だからこの人の教科だけがずば抜けていい。


「あっと、まだ間に合いますか?」

変な聞き方してしまった。


この質問の意味がわからない先生は、
目を少し開き、キョトンとした顔つきで
首をコテンと横に傾げた。


あぁ、どうすりゃいいんだ。


脳内がオンパレード状態で必死に言葉を探し、
アタフタする私。


私の質問を理解したのか、
それとも、
私自体が面白いのか、先生は下を向いてフッて鼻で笑った。


そして真剣な瞳をして私を見る。




数秒の沈黙。


そして先生は口を開いてこう言った。



「大丈夫さ。」



先生は
柔らかい笑顔だった____。