そして、春はハッとして、何かを思い出したかのように

「車に乗って」

『えっ?なんで』

あたしがそう言うと、春は笑って

「いいから早く♪」

そう言って、あたしを車に乗せた。
あたしを乗せると、春は車を走らせた。

あたしはその途中、何度も春に聞いた。

『ねぇ?どこ行くの』

だけど、春の答えは決まって

「秘密」

だった。春は、車を走らせて30分くらいのところで車を停めた。

あたしは、その風景を今でも覚えてるよ。それくらい、あの時のあたしには、印象的だった。

『綺麗…』

「だろ☆落ち込んだりなんかあった時は、海に限るだろ」

そう言ってまた、あたしの頭を撫でた。だけど、次はグシャグシャにして。

あたしは、すぐに海に走った。

綺麗ですごく綺麗で…今まで見たことのないくらい、夕焼けが海を綺麗に、照らしていた。

『春!ありがとう』

あたしは、そういうと春は笑っていた。

「なんかあったらまた、連れてきてやるから(笑)」

あたしは、大きく頷いた。

ねぇ?あたしは、こんなに忘れたいものを忘れられたのは、初めてだったんだ。

春の笑顔が、春の優しさが、あの日、身に染みた。