どこか見透かされた気分になって、居心地が悪い。




「そういえば仁科さんってこの学校1人で来たんだね」




心に矢をさされた気分。聞かれたくなかったな。




「うん…まあ…」




「寂しくなかったの?」




寂しくなかった?ううん。全然寂しくなんかなかった。むしろ嬉しかった。




「ううん。寂しくなかった…」





一瞬、桐谷さんが寂しそうな顔をした。
最近2人でいるとたまにみる、悲しげな顔。だけどすぐに明るい笑顔になる。




「そっか。まあどっちかっていうと新しい生活は楽しみになるよね〜」




そして、明るい話題にしてくれる。とても自然で、あたたかい気遣い。桐谷さんは分からないと思うけど、私あなたに結構心を許してる。




「うん。桐谷さんは?桐谷さんも結構遠いでしょ?この学校に入学した子少なくない?」





「私と颯太だけかなぁ…もう1人受けたんだけど落ちちゃったから。仁科さんはなんでこの学校に来ようと思ったの?」


息がつまるかと思った。聞かれたくない質問。だって理由は、逃げるためだから。でも、そんなこと言えない。





「えっと、賢いから…桐谷さんは?」





「私?内緒にしてね。好きな人が、ここの卒業生だから…」