どれくらい泣いただろう。




窓からオレンジ色の光がさしている。
コンコン、とドアをノックされてドアをみる。



「…どうしたの…?」



お母さんは、事故から仕事を休んで私を見てくれている。今までは仕事であんまり面倒をみてもらえなかったのに。



「ハル君のお母さんが来てるよ。架澄に渡したいものがあるって」





何を言いに来たの?



あの時私を慰めたことを撤回しに来たの?



私を責めに来たの…?





ドアをあけるとおばさんはいつもの優しげな顔で立っていた。




手には、ラケット…?




「すみちゃん、これ、受け取ってくれないかな?」





ラケットと手紙を差し出されて思わず受け取る。




ラケットを見るとハルがいつも大事に使っていたもの。




「受け取ってくれないかな?」




もう1度言われて、おばさんの顔を見る。





「晴人が使ってたのだけど、すみちゃんに持っててもらってたいと思うから。手紙は晴人のカバンから見つかったの。中身は読んでないから分からないけど」





ラケットと手紙を思わず抱きしめた。
おばさんの優しさが今はつらい。
誰よりもつらいのはおばさんなのに。




私を責めないから。




気がつくとまた涙が溢れていた。




「…あり…が…と…ごめ…なさ…」