「なら、みんな自己紹介のプリントをかけよ〜」

先生がプリントをまわす。
自己紹介かぁ…
なんて書こうかな…⁇

ツンツン
小山くんが私をつつく。

「なぁ、シャーペンかしてくんね?」
「えっ、持ってきてないの?」
「忘れてきたんだよ」

貸してもいいけど、私が持ってるのは1本だけ。
どうしよう…
でも、小山くん、すぐ終わりそうだからいいか

「いいよ、でも私この1本しかなくて…終わったらすぐ返してくれる?」
「おっけ。終わったらでいいんだよな?」

な、なに?
その不敵な笑み⁈⁈
なんか怪しい…

「よし、俺なんで書こうかなぁ」

そう言って、紙に目をむける。
なんだ、ちゃんとやってくれるんじゃん
そう思ったのも、数秒間だけ。

「やっぱ、だりーからやーめた」

えぇ⁈なにそれ!

「書かないなら、シャーペン返してよ!」
「え?俺まだ終わってないけど?」
「だって、今やーめたって言ったじゃない!」
「やーめたって言っただけで、終わったとは言ってないだろ?ばーか」

むっかぁぁぁぁぁ
なに、その意地悪な顔!
なら、私、終わらないじゃない!

キーンコーンカーンコーン
授業の終わるチャイムが鳴る。
そんな!授業がおわっちゃった!

「終わってないやつは、放課後終わるまで残っとけよ〜。なら解散。」

そんなー!
私、全然終わってない!
みんな、ぞくぞくと帰っていく。

「美沙、おわったー?」
「亜梨沙ぁ、終わってない〜」
「まじ⁈私、今日用事があるから先に帰ってもいいかな?」
「うん、いいよ!」
「ほんとごめんね!なら、またね!」

足早に教室をでる亜梨沙。
結局、残ったのは私と小山くんだけだった。

「あ〜あ、俺らだけかよ。」
「誰のせいだと思ってるの⁈」
「誰のせいなのかなぁ〜?」

もぉ、腹立つー!

「俺、だりぃから帰るわ。じゃあな」
「えっ!ちょっと!私のシャーペン!」
「え?まだ俺終わってないっつったろ?」

そう言って、小山くんは教室から出て行った。
結局残ったのは私だけ。
どうしたらいいの⁈
小山くんのせいでー!


それから、約30分。
なにもできないまま、私はただ教室にいるだけ。
私は小山くんみたいにサボったりすることができない。

どうしよ…だいぶ外暗くなってきた…
その時だった。

「は?まじでまだいた」

振り返ると、そこには帰ったはずの小山が立っていた。

「え、小山くん帰ったんじゃないの⁈」
「帰ったけど、戻ってきた。」
「どうして…⁇」
「いや、自己紹介のやつ終わったから。」

あ、先生に提出しに来たんだ

「提出しに来たんだ」
「ま、それもあるけどさ、これ。」

そう言って小山くんが手渡してきたのは、私が貸したシャーペンだった。

「え、これ…」
「言ったろ?終わったら返すって。」

満面の笑みで渡してくれる。
………ドクン………

ん?今の音はなに?

「ほら、はよかけ。待っててやるから。」
「え?えぁ、うん!」

なんて書こうかな…
ってゆか!そんなじーっと見られてたら、なんか落ち着かない!

「こ、小山くんはなんて書いたの⁇」
「え、あ俺?ほら」
「……え?」

自己紹介の紙には、

【小山って言います。以上】

「え、これだけ⁈」
「当たり前だろ。そんなんめんどくせぇ」

これだけなら、さっさと書いてよ…
はぁ、こんだけなら、私残らなくて
よかったのに…

「へー、お前、バスケ得意なの?以外だな。」
「勝手に見ないでよー!」
「別いいじゃん。どうせいつかは見られるんだから。」
「そうだけど…」

人の普通勝手にみないでしょ!

「それより、どうなの?バスケ。」
「う、うん。一応バスケ部だよ。」
「へー、意外だな、お前。」
「そ、そう?」
「うん。ってかはよかけ。おせーんだよ。」

誰が止めたと思ってるの⁈
そんな怒りもありつつも私は自己紹介のプリントを書き終えた。

「ったく、時間かけやがって。」
「誰かのせいじゃん!」
「へ〜誰かな?ほら、出しいくぞ。」

そして、私たちは職員室へと向かった。