混雑した学食内で、あたしが席取りをして泉が食券を買いに行く。



いつものように開いている席をなんとか見つけ出したあたしはそこに腰に巻いていたカーディガンを椅子にかけて席取りを完了させると食券を買う泉のもとに向かう。



「ちいちゃーん」



ブンブンと手を振って遠くの方であたしを呼ぶわんちゃんを見つけて自然と顔が緩んでしまう。



小走りで駆け寄って来たわんちゃんは今日も特別可愛い。あたしに抱きついて来た男にしては小柄で女よりも可愛い顔をしたわんちゃんこと岩城 礼央は去年同じクラスで仲良くなったあたしのペット。



「おはよう、わんちゃん」


「もうこんにちわだよ、ちいちゃん。ていうか俺のことわんちゃんって呼ぶな」


「えー、わんちゃんだもん。あたしのわんちゃん」


「まあ、わんちゃんって犬だからやだけど…ちいちゃんのならいっか」



パーマのかかった柔らかいベージュの髪をよしよしと撫でてやると目を細めてくすぐったそうにする仕草が本当に可愛くてキュンとしてしまう。



「あれ、そういえば他は?」



珍しく1人のわんちゃんに首を傾げ聞いてみると、「あっ!!」と急に大きな声をあげて目を丸くする。そんな姿も可愛いなんて、本当にわんちゃんは罪だ。



「俺ジャンケン負けたからあいつらのジュース買いに来たんだった」


「はあ?わんちゃんにジュース買いに行かせるなんてくそだな、あいつら」


「あいつらジャンケンつえーんだもんな。俺いつも負けんだぜ?」



「なんでだろう」なんて首を傾げ自分の手を見つめるわんちゃんが可愛すぎるけど、わかりやすいんだよね、わんちゃんって。全部顔に書いてあるんだもん。でもそんなわんちゃんが可愛いから教えてなんてあげないけど。



それよりもそんなわんちゃんを利用するあいつらの方が許せない。