「ちい、起きてー?お昼だよー」
明るい聞き慣れた親友の声であたしは重たい瞼をゆっくり開けると予想以上に近い親友の顔に「のわっ!!」意味不明な声をあげて飛び起きる。
「あ、起きた。ねえ、今日学食なんだよねー。混んじゃうし早く行こ」
「はいはい。てかもう絶対混んでるけどね」
鞄の中に突っ込んである財布を手に取り、先を歩く茶色の髪を揺らす親友、三坂 泉を欠伸をしながら追いかけるあたしにクラスメイトからは「おはよう」と声をかけられ適当に返して行く。
「そういえばさ、今日から新しいメニュー出るんだって」
「そうなの?でもあたしは唐揚げ定食は譲らないからね絶対」
学食の唐揚げ定食が好物のあたしは入学して1年と少し、お弁当の日以外は毎回食べさせて頂いている。手頃な300円という値段にあのボリューム、それから安定の味は何回食べても美味しいんだもん。
泉は「はいはい」と軽くあたしの言葉を流して、新作のメニューについて語りだす。
あたしもそれを同じように軽く流す。それよりも今日は本当に眠い。
腰に巻いてあるベージュのカーディガンをギュッと結びなおして、もう1度欠伸をして今だにブツブツと新作メニューについて語っている泉にもたれ掛かる。慣れている泉はそんなあたしを上手く支えて学食まで進んで行く。