「だからね、あの家は慧也(けいや)のものなんだよね」
あっ、美優ちゃんのおかげだよ。
美優ちゃんが譲ってくれたおかげ、ありがとう。
そう、勝手に話を畳まれる。
───意味がわからない。
店長の言葉の意味が。
ねぇ、どういうことですか?
あたしを騙したんですか?
「……じゃあ」
そう言って仕事に戻ろうとする店長。
あたしはやっとの事でその腕を掴んで、口を開いた。
「こんなの、立派な詐欺です。
同系色でかなり小さい文字で書かれてたら誰だってわかんない」
騙されたことがだんだんと頭で理解出来ていき、思わず泣きそうになる。
「でもちゃんと契約書にかいてあるから。
※いかなる場合でも契約解除は認められません って。
しかもハンコ押してるし。諦めて」
……ねぇなんで?
何であたしがこんな目に会わないといけないの?
素敵な出会いが欲しいって、そう欲ばったから?
……もう、誰か嘘だと言ってよ。