梓
翼
お姉ちゃん
それが我が家での呼び名だった。
あたしだけ、いつもお姉ちゃん。
お父さんとお母さんがつけてくれた
美優って名前、ちゃんとあるのに。
呼んではくれない。
本当に小さなことだけど。
呼び名一つで思春期の心は
大きくかき乱される。
「お姉ちゃん、夕飯の手伝いしてくれる?」
「梓と翼頼んだわよ、お姉ちゃん」
面倒を任されるのは、いつもあたしだけで二人には何も頼まない。
一つしか年が違わないのに
「しっかりしてよ、お姉ちゃんなんだから!」
お父さんにも、お母さんにも
怒られるのは
いつもあたしだけだった。