「すみません」


そう頭を下げたところで、お客様の怒りはおさまらない。




「だいたい、あなたね、一回で聞き取れないなんて余程ぼーっとしていたんじゃなくて?

仕事をなんだと思っているのか信じられないわ。

従業員としても、人間としても落ちぶれているのね、きっと」





さっきはあれだけ聞こえなかったのに、聞きたくもない内容になると


どうして聞こえてしまうのだろう。



ぼーっとしていた訳ではないけれど

一回では聞き取れなくて

お客様に迷惑をかけてしまい


不快な思いをさせてしまったことは

事実であるから。




あたしはただ、頭を下げ続けた。