「…い…った」

落ちた先が木だったので葉や枝などがクッションになって、どうにか大きな怪我はせずにすんだようだ。

こ、怖かった……
なんか、体の中の物が上の方に浮いたようなそんな感じ。
ジェットコースターに似てるけど、固定されてない分かなり怖い。

とりあえず、陽菜ちゃんが怪我をすることはなかったし

「よかったー…」

「よくねぇよ」

「え」

声をした方を振り返ると、服が所々汚れている鈴木くんがいた。

あれ?落ちたのは私だけじゃなかったの?

「お前が俺を引っ張りさえしなければ……なんで俺まで道連れにならなきゃならないんだよ。勝手に一人で落ちてろよ、くそが。」

あっそういえば、落ちるときに何かを掴んだ気がしたけど……あれは鈴木くんだったのか

うわーやってしまった。
大きな怪我は見たところ無いようだけど、下手したら死んでいたかもしれない。

なんと謝ればいいのか……土下座でも何でもしなければ……て、…え?

「す、鈴木くん…?」

…鈴木くんって、優しくて王子様みたいな……え。あの鈴木くん、ですよね?うん?
こんな口調だっけ?

「なんだよ。……ああ、こっちで話したことないんだっけ。あー素がばれちまった、めんどくせぇ」

そう言いながら舌打ちをしている鈴木くんを思わずガン見してしまう。

これが鈴木くんの素…?

「なんで」

なんで、いつもは素じゃないのだろう。

「はっそんなの決まってるじゃねぇか。俺自身の人気のためだよ。優等生みたいなのが教師には受けがいいし、優しくすれば女どもは寄ってくる。」

「はぁ……でも、そこまでして人気者にならなくてもいいんじゃ」

そもそも、何度もいうが鈴木くんはイケメンだ。
乙女ゲームの攻略対象なのだから当たり前と言えば当たり前だが。

とにかく、イケメンなんだったら何もしなくても人気はでると思うけど。


「よくねぇ。俺は自分に人気がないと落ち着かないんだよ。それに」

何かを言いかけて、少し辛そうな、痛みを堪えているような顔をする。
どうしたのだろう。

「それに?」

「……っとにかく!お前が目障りなんだよ秋月亮!!!」

「ええ!?」

「俺よりも女に人気あるし、教師は何かとお前のこと気にかけているし……男女のくせに生意気。お前は俺の敵だ!!」

知らんがな!!
別に女の子にモテたくてモテてるわけじゃないわ!

先生が気にかけてくれるのは私が何かと問題を起こすからだろうし。

「ふん。お前に構っている時間はねぇ。俺は探しに行く。せいぜい1人で頑張るこった。」

そう言って鈴木くんは去っていった。

いや、ほとんど鈴木くんが一方的に喋ってたんですけど。

「はぁ」

とりあえず、私もみんながいるところに戻らないと。
崖を登るにも、少し高すぎるので無理だ。もう少し高さが低いところまで行かないと。

そう思い、立ち上がった時だった。


「った……何…これ…っ」


激しい頭痛が秋月を襲う。
頭が割れそうになるような痛み。前にもあったような。

いつだったかと考えようとするが、無理だ。
意識が朦朧として視界が霞んでいく。


そして、バタリと彼女はその場に倒れた。