「ところでさ、君、なにかしたの?」
主語を言ってください、主語を。
…なにを言っているのか全くわかりません。
「なにをですか」
「追いかけられてたでしょ?さっき」
「ああ、」
てか、見てたんだ。
見てたんなら助けてくれても良かったのに…。
見かけ通り薄情な奴だな。
「別に何もしてませんけど」
ん?追いかけられていたってことは私が悪いのか?私のせいなのか?
悶々と考えていると、ブハッ、と吹き出す声が聞こえた。
「アハハハッ、理事長から聞いた通りの子だね♪おもしろい子だ」
…それはどういう意味なんでしょうか?
「あ、着いた」
気づけばいつのまにか大きな扉の前。
「気をつけてね♪彼らは普通じゃないから」
「はい」
どこがどう普通じゃないのか。
あまりにも度が過ぎていたら辞めるぞ。
…それにしても、おかしい。
他の教室は普通の引き戸なのに対して、Sクラスだけは観音開き。
周りも普通とはかけ離れて豪華だし。
「じゃあ、僕が呼んだら入って来てね♪」
語尾に♪をつけルンルン気分で入っていった先生。
…ほんとにこの学校大丈夫なんだろうか。
「は~い♪みんな静かにしてね~☆今から転校生を紹介するよ~★」
ガヤガヤガヤガヤ
…うるさい。
ほら見ろ、こんな先生じゃ生徒達なんかまとめられやしない。
と思ったそのとき、
バンッ
「テメェらいい加減にしろよ、うるセェんだよ!!静かにしろっつったのが聞こえなかったのかよこのクズ共!」
シーン
…え?
待って、ほんと待って、ちょっと待って。
この台詞あの人が言ったの?
え、マジで?
「あ、静かになった、良かった、良かった♪じゃあ、光さ~ん、入っておいで~★」
え、うそでしょ?
この空気の中、入っていけと…?
拷問だ…。
ガチャ コツコツコツ
「…月野光です…」
「ヤロー共!喜べ!!我が校初の女生徒だぞ!!」
「「「「「「ウォォォォォ!!!!!!!!」」」」」」
…ん?我が校初の……女生徒……?
聞き間違いかな?
「我が校初の…女生徒…?」
念のため聞いて見ることにした。
「ん?理事長が言ってなかったの?ここは元々男子校だったんだ」
き、聞いてねぇよォォォォオ!!!!!!!!
「…あんのくそ親父…」
「いやぁ、最初の頃はちゃんと女子もいたんだけど、この学校にいる奴らがあまりに変人過ぎてついていけないという苦情が殺到したんだ。挙げ句の果てには辞めちゃう子が続出しちゃってねぇ…。今では一人もいなくなっちゃった♪だから、君が来てくれて助かったよ」
いなくなっちゃった♪…じゃねぇよ!
「…帰ります」
くるっと方向転換。
出口に向かってまっしぐら。
「ま、待って…!」
慌てて追いかけてくるけど無視、無視。
あいつを殺してやんなきゃと、頭はそれのことでいっぱいだった。
「君がこのクラスに来た理由、わかったよ」
「あ゛あ゛?」
ちょっと、いや、かな~りムカついた。
こんな奴らと同類だと?
ふざけんな。
「あ~あ、理事長から学校に通うなら毎日スイーツ食べ放題だって聞いてたんだけどなぁ…」
ピクッピクッ
「仕方ないかぁ…、じゃあ、この話しはなかったことで…」
「頑張ります!!」
甘いスイーツ食べ放題と聞けば黙っちゃいられない。
絶対、なにがなんでも食べ尽くしてやる!!
先生はにんまり笑って、
「がんばってね♪」
と言い残し、去っていった。