しばらく走った先にある一際目を引く豪華な扉。
その上にかかってるプレート。
「あ、あれは…!」
そう、理事長室。
私は物も言わずに飛び込んだ。
ノックもせずに。
この際失礼とか気にしない。
こっちは命の危機だし。
生徒達もさすがに理事長室には入って来ないだろうし。
そもそもノックをする余裕自体なかったし。
「…フゥフゥ…ッ…!」
くっそ、苦しい…。
最近は大丈夫だったんだけどなぁ…。
「大丈夫かい?」
「いえ、おかまいな…く…?」
上の方から声が聞こえ、顔を上げると見知った顔が目の前にあった。
「…ケン…?」
ケンと呼ばれた男は微笑み、
「久し振りだな、光」
と言った。
「どうしてここにいるの?…もしかして不法侵入…とか…?」
声を潜めて言うと、いやいやと首を振り、
「私が理事長だからだ」
爆弾発言をした。
「…今、何歳だっけ?」
「24だが?」
「その年で理事長!?」
この男は本名賢二郎 通称ケン。
私の秘密を知ってる人でもある。
「最近理事長になったばかりなんだ」
ニコニコと穏やかに話すケン。
変わってないなぁ…。
「ところでどうしてそんなに息が切れてるんだい?だめじゃないか、走っちゃ」
「わかってるよ。でも…なんか…追われた」
「……なに?」
急激に声が低くなるケン。
どす黒く漂う殺気。
あ゛…や、やばい…。
「追われた……だと?」
「あ…、いや…」
「…生徒全員を退学にする」
「まっ…、ちょっ…ま、待って…!」
ケンなら本当にやりかねない。
普段は穏やかで優しいのに私のことになるとちょ~過保護なんだからなぁ。
「少し落ち着こう…!」
「私は常に冷静を保ってるが?」
「いや、そうだけど…!発想が怖いから…!頼むからそんなことしないで…!」
「……冗談だよ」
絶対冗談じゃなかった…!
目がマジだったもの!
今も口では笑ってるけど、目がぜんぜん笑ってないもの…!
「もう、ほんと怖い」