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北郷 美鳥 Hongou Midori は常に気怠げな美貌をした、冷徹なまでに他人に対して冷たい男だった。


理想を信じていない分、北郷 美鳥は生きる事に対しての感慨も薄く、とりわけ善悪の基準が狂っていた。


例え、他者が何を言おうとも自分が決めたのならば何であろうと悪にもなるし善にもなった。


北郷 美鳥にとって、世界の基準など無関係であり無意味なものだった。彼はその傲慢さに身を滅ぼす事もなく、確実に自分の世界を確立していく。


「…そろそろ、潮時なんじゃないか?」


美鳥の唯一無二の友人である男が、CLUBのVIPルームから何かを見つめている美鳥に言った。冷徹な美貌に、僅かに愛おしさが垣間見れる。


そんな美鳥の姿を見れるほどには、男はやはり親しい間柄らしい。


「…津雲 Tukumo 、三日後に彼奴らを招集しろ。」


美鳥の無感動な命令に、津雲はさっそく予定を脳裏に組み込む。
有能な津雲は、とある危惧を口にする。


「三日も開けて大丈夫なのか?噂は随分、出回ってるようだぞ。」


尾ひれの付いた噂は真実を覆う。例えその噂が真実であろうとも、そんなことは関係ないのだ。

ただ、噂の対象者が狙われるのを危惧していた。