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肩で切り揃えられた亜麻色の髪。淡い雪のように真っ白な肌。何の景色も写していないような瞳。殆ど動く事のない無表情。


如月 鳴世は、まるで創作されたかのような完璧な美貌の少女だった。
中性的な面立ちの鳴世は、見ようによっては少年にも見え、類稀な美貌を持っていた。


年を重ねるにつれて、鳴世の美貌はやはり群を抜き周囲からも注目されるようになった。そして、それを嫌がった鳴世は家から出る事を拒むようになり、いつしか自分の世界に閉じ籠ってしまう。


如月 鳴世には、一つ年下の弟がいた。
顔も性格も似ていないその弟にだけは、無償の愛情と無条件の信頼を抱いていた。


そんな如月 鳴世が月夜見 昴流 Tukuyomi Subaru と出会ったのは、中学に上がったばかりの頃だった。
入学早々、登校拒否を示した鳴世に紹介されたのが、四つ年上の昴流だった。


月夜見 昴流は、鳴世の知らない優しさと温もりを持った青年だった。


鳴世の全てを包み込む優しさと許容を持った昴流との関係は時の流れと共に穏やかに近付いていった。


鳴世は、普通とは掛け離れた子供だった。同年代の子供より秀でた知能を有し、謎めいた雰囲気を放つ彼女はいつだって周囲から孤立していた。


昴流との交流を経て、学校へ行くようにはなったものの、彼女が他者との関わりを持つことは必要最低限だった。


ごく僅かな人だけが、鳴世の領域に踏み込むことを許された。