■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



如月 鳴世 Kisaragi Naruse の最初の記憶は、白い女に抱き締められた事から始まる。


髪も、睫毛も、肌も、服装も…全てを白で彩ったその女は幻想的なまでに美しくそれでいて、何処か存在の儚い印象を与えた。


真っ白な女は、如月 鳴世を連れ出した。
その女と出逢う以前の記憶を全て失っていた鳴世。しかし、この日の事は今でもはっきりと覚えている。


「…きみのことを、誰よりも待ち望んでいる子の元へ帰ろうか。」


まるで、愛おしいと語るその穏やかな口調でそう言った女は、無表情を崩さない如月 鳴世に一瞬だけ懺悔の色を見せた。


真っ白な、汚れなど知らないような美しい女に連れ出され、如月 鳴世の物語はようやく始まりを迎える。


「そうだ。こちらの名を教えなくてはならないね。」


如月 鳴世の孤独な世界は、純白の色に染められてゆく…。