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如月 鳴世 Kisaragi Naruse の最初の記憶は、白い女に抱き締められた事から始まる。
髪も、睫毛も、肌も、服装も…全てを白で彩ったその女は幻想的なまでに美しくそれでいて、何処か存在の儚い印象を与えた。
真っ白な女は、如月 鳴世を連れ出した。
その女と出逢う以前の記憶を全て失っていた鳴世。しかし、この日の事は今でもはっきりと覚えている。
「…きみのことを、誰よりも待ち望んでいる子の元へ帰ろうか。」
まるで、愛おしいと語るその穏やかな口調でそう言った女は、無表情を崩さない如月 鳴世に一瞬だけ懺悔の色を見せた。
真っ白な、汚れなど知らないような美しい女に連れ出され、如月 鳴世の物語はようやく始まりを迎える。
「そうだ。こちらの名を教えなくてはならないね。」
如月 鳴世の孤独な世界は、純白の色に染められてゆく…。