村人たちが妖怪の住む森と忌み嫌うプリナートの森にフューリィが入ったのは、妖怪を退治して少しでも自分に興味を持ってもらいたかったからだという。

安直な気持ちでひとつの命を奪おうとしていた。しかし彼は道に迷い、クマに襲われて危うく死にかけ――

「そのとき突然神殿が現れて、そこからセラフィム様が、クマに何か優しく話しかけたんだ。そしたら凶暴だったクマが急に静かになって、森の奥に去っていったんだよ。セラフィム様は僕の怪我の治療もしてくれた…僕は驚いた。セラフィム様の髪と瞳の色を見て、この人が村の人たちのいう妖怪だって気付いた。でもそんなことより僕は一番、あの人の生き様に驚いたんだ」

セラフィムは妖怪と嫌われ森の奥、たったひとりで生きているというのに、うつむくことも自らを蔑むこともなかった。

セラフィムは孤独ではなかった。

その強さに、自分にはない強さに、フューリィは惹かれた。

フューリィの人生に一筋の光が差し込んだ瞬間だった。それは希望と呼べる光だった。

強くあれる、うつむかず生きられる、希望。

植物が光を求めてその体を伸ばすように、フューリィはセラフィムのもとを度々訪れるようになった。セラフィムはいつも穏やかに微笑みフューリィを迎えてくれた。