「やめろよ!」

パールと少年たちの間に、見知った背中が割り込んできた。

「―フューリィ」

「おいフューリィ、また妖怪の肩を持つのか!」

フューリィは眦(まなじり)を吊り上げると、パールをかばうように左手をかざして断じた。

「この子は妖怪じゃない! 僕の、友達だ!」

「―――」

―友達。

パールは驚いて、とにかく驚いて、目を見開きまじまじとフューリィの背中をみつめる。

―友達…。

その言葉があたたかな熱を持って、パールの心の深い所にまで沈んでいく。

「行こう、パール」

「あ…………うん」

フューリィがパールの手を引き、少年たちを振り切って歩きだした。

「ちぇ、なんだよ」「結局妖怪の肩を持つんじゃないか」「お前が妖怪なんじゃないの、フューリィ」少年たちの野次を背中に受けながらも、フューリィはしっかりとパールの手を握って、決して立ち止まらなかった。

そのままフューリィの家の前まで来ると、やっとフューリィが手を離した。

「…大丈夫だった? 気にしないで、あいつらいつもああなんだ」

フューリィがふっと見せた笑顔に、パールは心の底に沈んだあたたかい何かが再び、強く静かに熱を放つのを感じた。

「フューリィ………」

金色の睫毛を伏せて、パールは心の底からの言葉を呟いた。

「ありがとう…」

この時やっと、パールは覚悟を決めることができた。

生まれて初めてできた、友達。友達に、隠し事はしたくない。

「フューリィ、君に話さなきゃならないことがある。実は……」

「―待って。いい場所があるんだ。とびっきり見晴らしがいい場所。僕のお気に入りの場所。悩み事なんて吹き飛んじゃうような場所! そこで話そう?」

パールは金色の頭を揺らして、小さく頷いた。