フューリィにどうしても言えないこと。それが深い悩みとなり、何もする気が起きなかったのだ。

フューリィはそんなパールを見て彼なりに気づかってくれた。それがこの一輪挿しによく表れている。

「悩みがあるなら聞くよ」とも言ってくれた。だがこれは当のフューリィに深く関わる悩みなので、どうすることもできなかった。三度の食事も砂を噛むように味気なかった。

窓の外はしとしとと雨が降っている。

それなのにフューリィは今日もパンを売りに出かけている。

こんな風に家にこもるようになってもう4日、パールはいい加減自分に嫌気がさしてきた。言えばいい、言ってしまえばいい。いや言えない、言えっこない。

「ああもぉっ!」

家にこもっているから悪いのだ。パールはそう思った。思った途端いてもたってもいられなくなり、くすんだガラス戸を開け放って家の外へ飛び出した。

思慮深い彼にしてはそれはあまりにも迂闊な行動だった。

パールは雨に打たれて歩きながら、自分の頭が冷えて決断が下せるように願っていた。

傘を差しながら通りを行き来する村人の驚いたような視線にも気がつかなかった。

村の大通りに差し掛かった時、通りすがった女性がパールを見てひっと喉がひきつるような悲鳴をあげた。それで何かがおかしいと気づいた。女性の視線が自分の頭部に向いているのを見て、パールはやっと気がついた。

―髪の色…!!

植物の根の染料は雨ですべて落ち、パールは今金色に輝く頭をさらしていたのだ。