雷の力に炎の力。そして先日ウルザザードで手にした風の力。

それに加えて知能を得た魔月たち。

さらに邪闇巨石を与えれば、四魔月将たちは、失われていた圧倒的な力を取り戻すという。

これほどの力をもってして、脆弱な人間たちを滅ぼせぬはずがない。

そう悟ったライトは、トゥルファンを攻め、魔月の王国をつくることを決めたのだった。

四魔月将によれば、彼女と“光の人”なる人物を絶対に出会わせてはならないという。日に日に禍々しい力が満ちてくるライトには“光の人”の気配を探ることができたので、もう少しで居場所も突き止められそうだった。

―聖乙女(リル・ファーレ)…。

彼は無意識に、懐から水晶球をとりだして眺めていた。

あたたかな光が、柔らかな色合いが、ライトの心に広がっていく。最近は一人でいる時はなぜか決まって、この水晶球を手にするようになっていた。聖乙女の感情を伝える水晶球を。

―聖乙女は、今日も何かを想っている…。

淡い桜色が彼女の想いだとわかる。彼女の心の中には時に激しい感情も浮かぶが、いつも心の中心であたたかく何かを想っている。その想いはまっすぐにライトの心に届き、響く。ライトにはわからない。

いったい何を想っているというのか、何を想えばこんな色と光を放てるというのか。早く彼女をみつけて、問い質さなければならない。

はじめて会った時の聖乙女の笑顔が浮かぶ。二度目に会った時の様々な表情が浮かぶ。それほどに殺したいのだろう、とライトは思う。それほどに血を求めるのか――自分は。

ライトは水晶球を手にしている時にだけ自分が見せる安らいだ表情に、気がついていなかった。