かくしてリュティアとカイ、パールとフューリィの別行動となったわけだが…

パールたちはぎこちない会話で、深碧の湖に帰る前に、フューリィの本来の目的である本屋へ寄ることに決めた。決めたはいいものの、やはり何か気まずい。

ろくな会話もないまま、三区の中心にどんとそびえる本屋の前へとたどり着く。

「ここがいつも僕が寄る本屋だよ、街一番の本屋なんだ。この建物全部が本屋。すごい大きいでしょ?」

「ふ~ん、まあ」

パールがあまり感動しないので、フューリィは不満だった。

―尊大な態度をしてくれちゃってまあ。

パールはれっきとしたヴァルラムの王子、王城の大図書館を見慣れて育ったので、どんな大きな本屋でもなかなか感動できようはずもないのだが、フューリィにはそれがわからない。

パールはパールで、フューリィがまたふくれっつらになった理由がわからず、かすかに苛立ちを覚える。

―これだから子供は気まぐれで困る。

二人は間違いなく気まずい空気のまま、書店に入った。だが数十分後には、二人声を揃えてはしゃぎ、笑い合っていた。いったい、何が起こったというのか。

「僕もおみやげに何か本を買おうっと…これなんていいかな」

「やっぱりまた本を集めるからにはこれがいい! ………あ」

二人が手を伸ばしたのは、同じ本だった。赤い背表紙の“グレイター冒険物語1”。

「パール、君、この本、読んだことあるの」

「全巻読んだ」

「全20巻!? 僕もセラフィム様と一緒に読んだよ!」

「へぇ…」

二人はぎこちなく、“グレイター冒険物語”のここが面白い、ここがかっこいい、と話し合った。

それから違うコーナーでも、また違うコーナーでも、二人は度々同じ本を手に取った。そうするうちに二人は盛り上がり、はしゃいだ笑顔を見せるようになっていたのだった。