アクスの胸を満たしている気持ちは到底言葉であらわせるものではなかった。

あえて言うならば深い自己嫌悪と、自信喪失、悔恨―そういったものがごちゃまぜになった気持ちだ。

宿屋の一階の食堂で夕食をとるリュティア達を見守るかたちで、アクスは少し離れた席に座り、じっと一点をみつめていた。

エリアンヌの邸宅を去ってから、アクスはずっとこうして物思いにふけっている。その眉間に深い苦悩が見てとれる。

シュヴァリエのセリフが今も鋭い刃となってアクスの胸に突き立っていた。それは癒えない心の傷を抉り、潮のように新しい血を噴き上がらせる。あまりの出血に心がむせても、血は止まらない。眉間の皺と共に、痛みと苦しみは深くなるばかりだ。

わかっていたことだったはずだ。

王都ラヴィアに来ることになったその時から、こうなることはわかりきっていたはずだった。

アクスは心のどこかで信じていたのかもしれない。時の流れがすべての罪を洗い流してくれていることを。

だが現実は無情だった。

時折心配そうに視線をよこすリュティアの顔を、今のアクスは直視することができない。後ろめたい…そう、後ろめたいのだ。自分の罪を知ったら彼女がどんな顔をするかと思うと居たたまれない。

自分の考えだけでリュティアと旅を始めたが、果たしてそれはこんな罪を負う自分に許されることだったのだろうか…? 今のアクスにはその答えに確信が持てなかった。

自分はもう二度と、誰かと深く関わってはならない人間だったのではないか?

そう思うと心が震え、その震えを抑えようとアクスはテーブルの上に置いた拳を握りしめる。

その時にわかに外が騒がしくなった。