金の刺繍が施された純白のチュニックとズボン。

肩からは目の覚めるような濃紺のマントがさらりと流れる。そのマントには縁に控えめながら星を散りばめたような金糸の縫いとりがあり、身動きするたびにわずかな光を反射して、品の良い大人の雰囲気を漂わせる。

マントと同色に染め上げられた革のブーツは今流行の折り返しのあるもので、粋なだけでなく颯爽とした印象がある。

「――――それで」

等身大の鏡の中、カイが困惑顔で濃紺のマントの裾をつまみあげた。

「どうして私がこんな恰好をしなければならないんです?」

―ここはプリラヴィツェ王都ラヴィアの紳士服店。

10日かけて王都に着くなり、カイはアクスによって問答無用でこの店に連れ込まれ、あれよあれよと言う間にこんなふうに飾り立てられてしまった。

勘定はすべてパール持ちである。しっかりもののパールはヴァルラムを立つ時こっそりとたくさんの金貨を持ちこんでいたらしい。最初は小遣いが減るのに不満顔だったパールも、途中からは完全に面白がってカイの“飾り付け”に参加していた。

「それはまあ…あれだ。行けばわかる」

髪を黒く染めたアクスが意味深な視線をカイに注ぎ、励ますように肩を叩いた。

「すごい、まるで王子様だよおにーさん。決まってる!」

パールの言葉も大げさではなかった。カイは本当に美しい一国の王子のように見えた。腰に佩いた黄金の宝剣アヌスがこんなにも様になったことが今まであっただろうか。

「さっ、行こうおにーさん」

「で、でも………」

カイは外に行きたくなかった。

店の外ではフューリィと…、リュティアが待っているのだ。