アクスとカイが驚きの声を上げるのも無理はないが、リュティアもパールも確かに感じていた。この石を取り巻く聖なる力が、大いなる〈光の人〉の力であると。その力が石の禍々しさをやわらげるように、リュティアの恐怖もやわらいでいく。

〈光の人〉とは、リュティアに最強の力を与えるというリュティア達の探し人だ。魔月王猛き竜(グラン・ヴァイツ)よりも先に彼に会うことができなければ、この魔月と人間の戦いは人間たちの負けだという。

パールが力を込めてつぶやく。

「もしかしたらこの近くに、〈光の人〉がいるかも知れない…黄金の髪の美しい人、君に最後の最強の力を与えてくれる人が」

「この近くの、黄金の髪の人? それって、セラフィム様のことじゃないかな」

フューリィの何気ない調子のセリフに、リュティア達はぎょっとしてフューリィを振り返った。―今、何と…?

「セラフィム様はプリナートの森の神殿に住む、黄金の髪の美しい人で、僕の大切な大切な人なんだ」

「プリナートの森、神殿、黄金の髪って…まさかその方は、聖具の番人…?」

なんという偶然の導きだろうか。まさか一連の出来事が聖具のありか、はたまた〈光の人〉にまでつながっていようとは。リュティアは期待を込めたまなざしでフューリィをみつめた。

「そのセラフィムという方のところに、案内してもらえませんか?」

するとフューリィは鼻の頭をこすりながら笑った。

「お安い御用だよ。お姉さんたちはセラフィム様の命の恩人だもの! この石を村の人たちに見せて納得してもらえたら、すぐにでもセラフィム様のところに案内するよ!」

「その前に乙女(ファーレ)には一働きしてもらうよ。この石に封印をかけ直すんだ。そうすればすぐにでも村の人たちはもとどおりになる。やってくれるよね?」

―〈光の人〉に会えるかもしれない。

その期待と緊張に胸が膨らみ、自分で封印ができるか不安な気持ちは小さかった。きっとできると信じられた。

リュティアはしっかりと頷き、石を手に取った。

果たしてセラフィムは〈光の人〉なのであろうか。

〈光の人〉とは一体、どんな人物なのであろうか。

また、彼がくれるという最強の力とは、一体どんな力なのであろうか。