フューリィは簡単に諦めたりしなかった。大切な人の命がかかっているのだ。正攻法で行ってもだめなら奇計を用いるまでだ。

というわけで夜半、フューリィとリュティア達は鉱山に忍び入っていた。

昼間坑道を照らしていたランプは消され、灯りと言えば一向がそれぞれに持つ手元のランプのわびしい灯りしかない。

先の見えない深い闇夜を数匹身を寄せ合って孤独に飛ぶ蛍はこんな気分だろうか。

リュティアは知らず前を行くカイの服の裾を握りしめていた。

「そこに何があるって言うんだ? リュー」

「わかりません…でもとても邪悪な何かです」

答えながら、リュティアは背筋が冷たくて落ち着かない。

先頭をパールが行き、後ろはアクスが固めているというのに情けないと、リュティアは自分を叱咤して前を向いて歩いた。

「…ここだ。この奥だ」

パールのしっかりした声で、目的地に着いたことがわかった。

一行は顔を見合わせ、ごくりと唾を飲み込んでパールを先頭にいよいよ横穴に入っていった。

横穴の闇は今までよりもいっそう深く、リュティアは邪悪な気配が踏み出す一歩ごとに強く濃くなっていくのをびりびりと感じた。

横穴は細く曲がりくねってわずかに下っていて、すぐに開けた空間に出た。どうやら行き止まりのようだ。

「何もないよ?」

フューリィの訝しげな幼い声が土と石の壁にこだまする。