広間に着く前から、リュティアとパールの二人は肌が粟立つような邪悪な気配を感じていた。だが見せられたケースの中の三又槍は、まばゆいまでに美しい代物だった。

見るなりパールが目を細めて呟いた。

「これは…その昔星麗たちが魔月との戦いの時使っていたもの…聖なる武器だ…」

「聖なる武器…? 奇病の原因はこの武器ではないってこと?」

フューリィが悲しげに眉根を絞って唸る。

リュティアも腑に落ちなかった。それではこの広間に満ち満ちた邪悪な“魔の力の気配”は一体なんだというのか。答えを求めて広間に視線を巡らせたリュティアは、あるものをみつけてはっとした。

それは広間の横にぽっかりと空いた穴―細い横道だった。

「あそこです! あそこに何かある!」

間違いなかった。邪悪な気配はあの向こうからしているのだ。

いよいよ奇病の原因が明らかになる時が来た。

しかしこの奥に、一体何があるというのだろうか。

「おい、何してるエリク、ここから先は立ち入り禁止だ」

その時一人の鉱夫が現れて、一行の行く手を塞いだ。

「でも、この先に…」

「立ち入り禁止ったら、禁止だ」

鉱夫は頑として譲らず、結局この時一行は惜しいところで探索を断念せざるをえなかった。