「やめろぉっ!」

フューリィの声だ。

視界の隅で全身血だらけのフューリィがゴーグの太い脚にとりすがっているのが見えた。ゴーグはそれを蠅でも払うように振り払った。

―フューリィ!

と叫んだつもりが声はぎりぎりと締め付けられる腕のせいでくぐもって言葉にならない。

「やめろったらやめろぉっ!」

フューリィは諦めることなく、何度でもゴーグに殴りかかっていった。

それがあまりにもうざったいと感じたのか、ゴーグは土壁を変化させ、フューリィの体を拘束した。

「うるさいど小僧! お前から食べてやる!」

ゴーグは狙いをフューリィに変えた。その瞬間アクスへの拘束が緩む。

アクスは痛みになど構わず、がむしゃらに斧を振り下ろした。

忌々しい土壁によって攻撃が効かないのはわかっていたが、やらずにいられなかったのだ。

しかしことは予想もつかない方向に転じた。

「ぎゃっ!」

アクスの斧がゴーグの腰をとらえたのだ。

今までまったく攻撃が効かなかったのに、なぜ…。

「なにするど!」

考えているひまはなかった。ゴーグはフューリィを乱暴に放り出すと、再びアクスに向かって来た。今度はフューリィが飛びついても動じない。無視することに決めたらしい。

アクスは応戦しようとしたが、痛みのために身動きがままならない。

万事休すか、と思われたその時だった。