フューリィはどうしようもない感情に突き動かされて、セラフィムの肩や腕をばしばしと叩いた。

「わからずや!! 大っきらいだ! そんなセラフィム様、大っきらいだ!!」

「フューリィ…」

セラフィムは暴れるフューリィを、包み込むように抱きしめた。

「私はお前のことが好きだよ。お前のことを、本当の息子のように思っていた。お前と共に生きたいと、叶わぬ願いを抱いてしまうくらいに…だからずっと悩んでいたんだ…。でも、時が来てしまった。一刻も早く、聖具を完成させなければ、聖乙女が危ない」

「わからずや! わからずや!」

フューリィの声は悲鳴のようにあたりの空気をつんざいた。

「さようなら、フューリィ。…今まで、かけがえのない時間をありがとう。番人として長い時を生きてきた私にとって、お前と過ごした四年間が何より幸せだった。…約束を果たせない私を許してくれ。そしてこんな私を許してくれるなら…村を、ピューアの村を、守ってくれ。邪闇巨石を狙って魔月の群れが迫っている…人々には夢で警告し、逃げさせたが…奴らは村のすべてを破壊するだろう…どうか村を…」

セラフィムが目を閉じると、虹の錫杖が彼の手から離れぽぅっと光を放ちながら宙に浮き上がった。神々しいまでに美しいその杖の中央で、虹色の宝玉がきらきらと輝きを増していく。

「せらふぃむさま…?」

フューリィは触れたセラフィムの腕から力が、生命力が杖へと流れだしていくのを感じた。

虹の錫杖が、目を開けていられないほどの強烈な光を放つ!

そして、セラフィムの腕が、冷たくなる。


フューリィは、目の前が真っ暗になった。

「う…そだ、いやだ、セラフィム様ぁぁぁ―――!!」