何とも滑稽な夜だったのだ。
最後に、この男が失敗してもその滑稽さが更に増すだけだと思いながらもさっきの暴力のせいか俺は、この男があまりに酷かったらジョニーウォーカーの瓶を投げつけてやろうと一気に残りを飲み干した。
男は、マイクの前に立つとマラカスを片手に一つずつ持ち歌い始めた。
最初の一声で俺は、何かが、起こっていると思った。
男はゲットアップスタンドアップを自分流にアレンジしながらマラカスを振りながら歌う。
他の客も最初は好奇の目で見ていたのが、変わり男のペースに乗せられている。
男は裸足の足を高く上げてリズムを取りながら踊る。
マラカスの音が、店内に響き俺の心を昂らせた。
男の表情は楽しそうでもあったが、何処か鬼気迫る物を感じた。
男の歌が、特別に上手いとは思わなかったが、心を揺さぶる何かを持っていた。