「皆さん、ごきげんよう。
拙者、伊東甲子太郎と申します」


髷を結わずに流したままの黒髪が、さらりと揺れる。

後ろへなでつけられた黒髪が一筋、その白い額に落ちた。

柳形の眉の下の、長い睫毛に縁取られた、ちょっとつり上がった目。
すっとした鼻、小さな唇。

 
「うわぁ……」

あたしは思わずため息をもらしてしまった。

こんなに綺麗な男の人を見るのは、初めてだったから。


総司も斎藤先生も平助くんも……今までも美丈夫揃いだとは思っていたけど、みんな生まれたままの顔が良いだけで、そんなに身なりにかまったりしてない。


こんなに洗練された印象の人は初めて。


着物と袴の色のあわせかたから着こなしまで、無駄におしゃれ。


新撰組のお洒落将軍の土方副長の黒羽二重さえ野暮ったく見える。


周りの隊士たちも同じことを思ったようで、あちこちからため息が聞こえた。