「まあ、俺も同じ思いですよ。

わざわざ自分の道場をたたんで新撰組に入隊するなんて、よっぽどの覚悟があるのか、
腹に一物あるのか、どちらかだと思いますから」


総司は笑うのをやめ、真面目な顔で言った。


「それは……どういう意味?」


「伊東って人物に新撰組を乗っ取られたりしねえか、今から用心しなきゃなってことだよ」


あたしが聞くと、総司が低い声で答える。


そんな……。

伊東さんが新撰組を乗っ取りに来るなんて、心配しすぎじゃない?


「だ、大丈夫でしょう?

だって、平助くんが入隊をお願いしたお人だって言うじゃないですか」


平助くんは若いけど、人を見る目はあるはず……。


反論したあたしを、土方副長はため息をつきながら見つめた。


「だと、いいけどな」


二人の緊張した様子に、胸の中がざわりと波立った。


こうして伊東一派は、波乱の予感を伴って、昼過ぎに屯所に到着した。