10月(現歴11月)になって、いよいよ局長が伊東さんを連れて帰ってくるぞというときに……。
私と総司は、副長室に呼ばれてしまった。
土方副長は、いつになくオシャレをして、黒羽二重の羽織なんか着ちゃってる。
「今から、近藤さんが帰ってくる。
そこで小娘に、ひとつ任務を言い渡す」
「なんでしょう?」
「近藤さんが連れてくる、伊東という男……。
どんな人物か、まだよくわからねえ。
今日から俺がいいというまで、伊東の動向を探れ」
「え、あ、はい」
伊東さんは江戸から仲間を何人か連れてくるようで、そのために前川邸の離れを空け、そこに住むことになっている。
それにしても土方副長、もうすでに会ったこともない伊東さんを嫌っているみたい……。
前評判はすごくいいのになあ。
なんでだろ?
「浮気調査ってわけですか」
総司がぼそっと言った。
「浮気?」
「近藤先生が、江戸で自分より有能で顔のいい男を見つけて連れてくるのが、気にいらないんでしょう?
しかも土方さんと同い年らしいですね」