「かーわいーっ」

山神くんはそう言うと、あたしのほっぺたにキスをした。

「えぇーっ‼︎」

「だってかわいかったんだもん!」

テヘッと笑う山神くん。
そんなあたしたちを見ていた一部の女子が騒ぎ始めた。

「あの子って町屋様と同部屋なんじゃないの?」

「それなのに山神様に手を出すなんて…」

そんなつもりないのに、と思って辺りを見渡すとツカツカと未月が近寄って来た。

「漣、どいてくれるかな?」

「なんだよー、いいじゃん。未月と付き合ってるわけじゃないんでしょ?朱莉ちゃん」

そう聞かれてこくこくと頭を縦に振った。

「それじゃあ朱莉さん、ちょっとこちらへ」

ニセモノ王子様の未月が微笑んだ。

「なんだよー、未月のケチ!」

そんな山神くんをよそに、未月はグングン歩いて行く。
そしてようやく花のトンネルのようになってるところで足を止めた。